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東京高等裁判所 平成4年(ネ)3133号 判決 1993年8月30日

控訴人・附帯被控訴人(被告) 国

右代表者法務大臣 三ケ月章

右指定代理人 渡邉和義

同 石井一成

同 深井剛良

同 仁平義和

同 原嶋都司郎

同 宮野勉

同 栃内克巳

被控訴人・附帯控訴人(原告) 三和交通株式会社

右代表者代表取締役 吉川永一

右訴訟代理人弁護士 木村晋介

同 飯田正剛

同 伊藤芳朗

主文

本件控訴と附帯控訴(但し、原判決主文第一項についての仮執行宣言の申立てを除く。)とをいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の、附帯控訴費用は被控訴人(附帯控訴人)の各負担とする。

原判決の主文第一項は仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求めた裁判

(本件控訴について)

一、控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)

1. 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2. 被控訴人(附帯控訴人)の請求を棄却する。

二、被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)

本件控訴を棄却する。

(附帯控訴について)

三、被控訴人

1. 原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。

2. 控訴人は、被控訴人に対し、金二八四二万一六五六円に対する平成元年二月二三日から、金五一六万四九五〇円に対する平成元年三月二一日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

3. 原判決主文第一項及び右2につき仮執行の宣言

四、控訴人

附帯控訴を棄却する。

第二、当事者の主張

原判決の「事実」中「第二 当事者の主張」に記載のとおりであるから(但し、原判決三枚目裏末行の「平成三年」を「平成元年」に改め、同五枚目裏七行目の「当時、」の次に「遅くとも平成元年一一月一日以降、」を加える。なお、同三枚目裏四行目の「昭和六三年」は「昭和六二年」に原審において更正済である。)、これをここに引用する。

第三、証拠<省略>

理由

一、次のとおり訂正付加するほかは、原判決の「理由」に記載のとおりであるから(但し、原判決一四枚目表一行目冒頭から同四行目末尾までを除く。なお、同九枚目裏一〇行目の「昭和六三年」は「昭和六二年」に原審で更正済である。)、これをここに引用する。

1. 原判決九枚目裏九行目から一〇行目にかけての「第五号証」の次に「、成立の争いのない同第一五号証の一(小栗義煕の陳述録取書)、これにより成立が認められる同第一二号証」を、同一〇枚目表二行目の「就任させるとともに」の次に「(昭和六二年度分の同人の給料も被控訴人から支給された。)」を、それぞれ加える。

2. 同一〇枚目表七行目の「営業は、」の次に「右のような実情にもかかわらず、法的には、」を、同八行目末尾に「これを法的には被控訴人の営業と認めることは、同条による認可を明文で効力要件とした同条に反する脱法行為を容認することになり、到底許されることではない。」をそれぞれ加える。

3. 同一〇枚目表九行目冒頭から同裏九行目の「得ない。」までを次のとおり改める。

「加えて、小栗口座についても、前掲甲第一五号証の一、これにより成立が認められる同第一一号証、原審及び当審証人小栗義熙の各証言並びに当審証人久保恒重の証言を総合すれば、小栗は、被控訴人の事実上の支配下にある万葉交通における被控訴人から派遣された代表取締役として、形式的には万葉交通の営業として従来の営業を行う必要上、取引停止処分中のため当座勘定取引口座を設けられない万葉交通のために開設する趣旨で、被控訴人の主力銀行である三井銀行伊勢崎町支店を介し、かつ、開設のための種銭一〇〇〇円も被控訴人の本店から実際上の被控訴人の八王子営業所である万葉交通宛に出金を受けた上、万葉交通の計算においてこれを出捐して、昭和六二年五月に同銀行八王子支店と当座勘定取引契約を締結して小栗口座を開設したこと、以来右口座に、三九条認可が下りるまでの間の万葉交通による営業の収入が預託されたり、逆に右口座から右営業により生ずるタクシーの修理代、ガソリン代等の費用や社会保険料等が支出されたりしたことが認められる。

そうであるとすれば、小栗口座は、万葉交通の出捐により開設され、万葉交通の営業収入が入金されていたものであり、その開設以来三九条認可が下りるまでの間は、法的には万葉交通に帰属していたものといわざるを得ない。確かに、前掲各証拠によれば、小栗口座に余剰ができると、まとまった金額としてそこからその都度被控訴人の本店に送金されるなどしたことも認められるが、それは、小栗口座にある万葉交通の資金が被控訴人の本店に移動したことを意味するものではあっても、小栗口座の前示のような性格をかえるものではない。万葉交通は、事実上被控訴人が支配していたとしても、前示のように、法的には、万葉交通は独立の存在であって、被控訴人と同一視することはできないのであるから、そうした万葉交通の口座である小栗口座を被控訴人の口座と法的に認めることは、前記判文の趣旨に照らして、許されることではない(小栗口座は被控訴人のものである旨の原審及び当審証人小栗義煕の各証言部分もその実質をいう趣旨であって、事実に関する供述として、右判示に抵触するものではない。)。

しかしながら、前掲甲第一号証及び原審証人小栗義熙の証言によれば、万葉交通、被控訴人間の本件営業の譲渡に当たり、両者間の昭和六二年三月三〇日付け営業権売買契約書第四条で同日以後の経営または所有権に基づく一切の債権は被控訴人に帰属する旨定められた(同条第二項の「それ以前」という意味は、右契約の全体の趣旨を整合的に理解する立場で読めば、「同日より前」の意味であると解される。)ことが認められるから、昭和六三年一一月一一日本件営業の譲渡が認可されてその効力が生じたことによって、同日以後被控訴人による本件営業により生じた債権はもとより、前記昭和六二年三月三〇日から右認可の日までの間に生じた万葉交通の営業に基づく一切の債権も右認可の日に被控訴人に帰属するに至ったものといわなければならない(前記契約書第四条の趣旨は、右認可により効力が発生した時点において、右三月三〇日から右認可の日までの間に生じた万葉交通の営業に基づく一切の債権〔同日前までは法的には万葉交通の債権〕を被控訴人に譲渡する趣旨を含むものと解される。)。

そうすると、右認可の日以降、小栗口座及びその当座預金は、被控訴人に帰属するものであって、その預金払戻請求権は被控訴人に帰属するものといわざるを得ない。」

4. 同一三枚目表一行目から二行目にかけての「書面は提出されていない」の次に「し、成立に争いのない乙第九号証(牧野繁の陳述書)の同人の陳述及び当審証人牧野繁の証言も被控訴人の責任者が、万葉交通が支払えないときは、被控訴人が資金援助をするとか資金援助するなどして支払わせると言ったなどというにとどまるものである」を加える。

5. 同一三枚目裏三行目の「当時、」の次に、「遅くとも平成元年一一月一日以降、」を加える。

二、結論

よって、被控訴人の本訴請求は原判決主文第一項の限度で理由があるから、これを認容した原判決は正当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、被控訴人の附帯控訴は原判決主文第一項について仮執行の宣言を求める限度で理由があるから、これを認容することとし、その余は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤滋夫 裁判官 矢崎正彦 水谷正俊)

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